その10・通常帝王切開の準備

Y病院では、帝王切開を含む手術日は、基本的に週に一度、木曜日と決められている。そのため、いつも水曜日夕方〜木曜日は病棟内がばたばたし、スタッフさんたちは走り回っている。もちろん、緊急手術は木曜日に限らず、夜中だろうが早朝だろうが行われる。
私が入院していた時も、いよいよこれ以上は持たないということになり、緊急帝王切開、という入院仲間が何人もいた。ちなみに、「これ以上は持たない」=「母子共にここが一番ベスト(早産であっても)」という見極めがY病院はきちんとされており、早産になっても「母子共に元気」という方ばかりだったということを、何度も書いてはいるがここでも書き加えておく。
Y病院はNICUがあるため、他病院から救急車で運ばれてくる妊婦さんを緊急帝王切開・・・というパターンも多い(もちろんベッドに空きがあればの話だ)。いつだったか記憶がさだかではないが、夜遅く空いていたはずの隣のベッドに助産師さんたちがやってきて何か準備している。こういう時は誰かが入院してくるのだが、それにしても時間がちと遅すぎる。聞くつもりはなかったが、隣から聞こえるベッドに入ってきた産婦さんと先生の会話によると、どうもこの妊婦さんは危ない、ということで大至急他病院からY病院に送られてきたらしく、赤ちゃんは非常に危険な状態だったが緊急帝王切開で助かってNICUに入った、ということらしかった。
それはさておき、私たち夫婦はM先生から「一番持てば37週の正産期に入った手術日に帝王切開です。」と事前に説明を受けており、「そうなればそんな幸せなことはないけどなあ。」と祈りつつ、一日一日過ごしていたのだが、そもそも緊急帝王切開とそうでない帝王切開はどう違うのか。
ひとことで言うと、計画して手術に望めるかどうかだけのことである。正産期なら普通、計画的な帝王切開になる。
まず、病院(医師)側からすると、手術の概要とか、手術することにはこういうリスクがあるとかなんだとか、事前に説明し承諾書に患者とその家族(ダンナ)のサインを貰っておかなければいけないのだが、緊急の場合この時間が取れない。通常の妊婦の帝王切開ならば手術前日にこういう事務的なことの予定が立てられるが、緊急だと難しい。なので、私もそうであったが、切迫で入院している妊婦さんの場合は、医師が早めに何度かダンナを呼んで現状を説明し、予定している手術日まで持たなければ(つまり急変したら)、事後承諾ないし電話で承諾をいただきます、と断っておくのだ。急変の場合、病院の近所に住んでいる人でもかなり慌しい。さらに私の場合里帰りしてY病院ににいたので、急変してもダンナが来れるのは間違いなく手術後、つまり産まれちゃってからになるので、その辺のことをM先生はかなり気遣ってくれていたようだ。
で、私は緊急帝王切開の危険と隣りあわせで、通常の(笑)帝王切開扱いになったのだが、通常帝王切開(こんな言い方普通はしないんだけど)になった理由は2つ。最大の理由は「逆子」だったから。無理に逆子を直す、ということは行われなかった。「なんかこの子、この姿勢が落ち着いてるみたいだから。このままで行きましょう」とM先生は言っていた。もうひとうの理由は子宮筋腫である。筋腫の状態によっては普通分娩も可能なのだが、私の場合、逆子&筋腫と赤ちゃんの位置関係という理由で、帝王切開決定。
それから、帝王切開は簡単な手術(らしい・・・)とはいえ、やっぱり手術である。手術を受ける妊婦さんの身体のデータと大量出血したときの準備がいる。私は心電図、MRI、自己血の貯血を行った。
MRIについては、子宮筋腫があるのであらかじめ筋腫の場所を医師が把握した方がよいから受けさせられた。大きくなったお腹であおむけになり狭いところに入れられて、なんかすごく息苦しくてしんどかった。「耐えられない、と思ったら言って下さいね〜」とMRI室の人に言われたが、そこはそれ、データないと困るし。ちなみにMRIはある程度の週数にならないと(この週数忘れた)胎児に影響する。そのため、正産期での帝王切開の準備に入れたことで私は受けることができた。もし早い段階で緊急帝王切開、という羽目になっていたら、このデータがないので医師側がちょっと厄介だったのだろうと思う。
自己血の貯血は日を変えて2回に分けて行われる。が、血を採るということは、赤ちゃんと母体にとってけっこうなリスクだ。2回採るのが無理そうな人は1回でおしまい。ちなみに私は、この貯血のため鉄剤注射を数日打ってもらっていたが、1度の貯血後、鉄剤注射を続けたにもかかわらず、貧血気味ということで1回でやめになった。ちなみに最初から貧血がひどくて1回も取れない&緊急帝王切開、という人は自己血がないので、万一の時は他人の血を輸血、ということになるのだ(もちろん、自己血も他人の血もいらなかった、という場合もある)。これは正直嫌だったので、1回でも採れてよかった。で、採る最中はモニターで赤ちゃんの様子を確認しつつ、少しでもおかしなことがあれば即中止。それから、針をさしてもなかなか血が採れない、採れるけどたまるのが遅くて固まっちゃう、という人もいるらしい。とにかく、けっこう大変なことだ。私は「点滴針が入りません」でも書いたとおり、助産師さん泣かせの血管持ちだが、位置的に点滴は刺せなくても採血はできる血管というのがあって、そこからうまく早く血を採ることができた。当日はM先生他、多数の助産師さんが立ち会ってくれて驚いたが、どうもこの日はお産が少なかった&血を採ることはリスクがあるので万一の場合に待機していた、らしい。
だんだん普通の妊婦の扱いに近くなってきた。あとは、予定している手術日まで産まれないでください、と祈るのみ。